2021年11月4日木曜日

川沿いの部屋

川沿いの部屋
黄金町バザール2021参加作品

①人為と然~24の石の川詩




②その、一種の断続性



③大いなる川 2013-2021


■川沿いの部屋 アーティストステイトメント

僕らが生まれる前から存在する川、大岡川。この川の川源は円海山で、横浜で2番目に高い山だそうだが、標高たった150メートル前後という、ただの丘といっても良い程度の山だ。そんな低い山から流れてくる大岡川の川の水は、もちろん上流はとても美しいことだろう。だが下流となる黄金町一帯は時に美しい場合もあるがいまもゴミや汚物がたくさん流れ、海の側と言うこともあり逆流することもままある。人間にとって自然と言うものは、言ってみれば神々に例えられるような神秘な存在でもあり、彼らは言葉を発しなくてもこれまで様々な人間模様を見てきたに違いない。それは一人の人間の物語かもしれないし、また集団の人間模様だったかもしれない。80年前戦争が起こり、空襲で沢山の人が死んでいった。沢山の人の死がこの水面に映され、また身が投げられ、流れていった。その後もこの川は様々な人の世の風情や風俗、醜態を目にしてきた。今も年に数回人が身を投げている。この川は、そういう僕ら人の世の映し絵のようなものであり、また同時に神であるが故、黙って僕らの人生を一人一人その眼差しの中に映し、やがてその瞼に残った残像は大いなる海へと流れていく。川の記憶は海底へと沈み、そこで何千何万年と時を経て醸成され、この惑星全体に生命の精神的な成長源を分配し、惑星そのものがひとつの生命体として精神的な進化を遂げていくんじゃなかろうか、と妄想する…。
今回、海底では無いが川底にあった鉱物を題材に川の記憶、そしてそこに封じ込められた「時」をイメージして作品を作ってみた。記憶と言うのは常に過去との接点であると同時に「史」である以上、未来とも関係している。神々である川は、僕ら人の生命/自然性と関係しているだけでなく、人間の社会性もともに体験し、その重みも知っているんではないだろうか?そういう中で、これからの僕らのコミュニティ性や政治性を含めた人の世を考える時、これまで様々な人間模様を眺め、受け止めてきた「川の眼差し」を思い出し、僕ら人間ももっと思慮深くなっていければよいのになぁ、と、軽率にも考えたりする…。

吉本直紀



タイトル 川沿いの部屋
制作年 2021年

以下、3点の展示作品

①人為と然~24の石の川詩
素材・技法 写真、鉱物、エポキシ樹脂、木製額
サイズ(HxWxD) 210×297mm×35mm、150×125×55mm、450mm×320mm×60mm

②その、一種の断続性
素材・技法 木材、プロジェクションマッピング
サイズ(HxWxD) (120×90×6)×3

③大いなる川 2013-2021
素材・技法 映像

photo by Naoto Kinoshita