2009年1月21日水曜日

B/L/U/R

空一面どんよりした雲、空気は冷たく、淋しげな透明感が漂っていた。
透明だけど、粗いフィルムみたいな黒いポツポツが湿った空気に混ざっている。道の遠くにボヤケた人影が歩き、車の音が遠のきまた近寄ってくる。
冬の空気って遠くまで限りなくピーンと一貫した波長が繋がっているようで、否応なく骨まで染みるナ・・。 
それで、淋しさって、つまり自分と向き合うしかなくなるから感じるんだろうなと、夕飯のコンビニへ向かう途中、思う。・・いや、前もそう思ったな。
で、いっこうに悪いことじゃない。詩的な時間だし、オレは好きだけど。

不況の構造のことばかり考えてると脳みそが縦割りになるというか、ことが慣れない経済であるが故に、総じて脳そのものが社会構造学的になるというか、つまり、逆にじつに単純に思えてくるんだナ・・。平らな場所に建物が建つと、少しでも隙間があれば物を建てたくなる邦人特有の貧乏根性に憤りを感じたりする。食うために建て、視野を阻める。そんなだったらニートの方がましだとも思うが。世間じゃやたら働けという、が、食うがための生命力に蝕まれたお前ら、そしてオレたち人間構造そのものを恨んだこともないのかと、逆に不思議に思ったりするオレはやはり、世間には笑われる。
新しいマルクス主義を切望する文化人もいるけど、そもそも「主義」ってのが胡散臭いってことにどうしてあのインテリどもはいつまでたっても気がつかねんだ、と常日頃思うわけなんだが・・。


さてさて、戯言は良しとして、新年になって特別変わったことは、ない。
長い映画を2本見た。長い映画は好きだ。長いと感情移入もその分深まる。

近況の報告
  • 東京乾電池『秘密の花園』(1.15)  暮の原田家餅つきで偶然トイレ待ちのとき隣にやって来られた俳優の柄本明さんに声をかけた。佐藤信さんのことを話すと、目の色を変えて話す柄本さんは本当に本当に芝居が好きなんだなと実感。柄本さん直々にチラシを頂き、「絶対行きます」と約束し、Stavros Film お楽しみ隊長&元唐組の糸瓜をお供にいいちこ持参で公演終了数日前ギリギリ危うかったが、観劇。ちょうど作の唐十郎氏も見えており、糸瓜は恭しく挨拶。開演ぎりぎりで鴎座でお世話になってるヲザキさんが偶然隣に座る~まあ、映像業界もそうだけど、舞台も狭いよね(笑)。で、もちろん、お芝居はとても楽しめた~設定はむろん異なりはするが『白痴』でドストエフスキーが省いた部分、ナスターシャ・フィリーポプナ、ラゴージン、ムイシュキンの空白の三角関係を唐氏が独創的観点と想像力で描いたのだろうか?と思わせるほど、豊かで優れていた。柄本さんは素晴らしい。今回は出番こそそう多くはなかったが、役者の存在性=磁場とは、いったい如何なるものなのかと、ついつい、見ていて思ってしまう・・。
  • 『アラビアのロレンス』(1.17)  DVDで持っているデジタルリマスター版が昔IMAXだった高島屋の劇場でやっているので見に行く。DVDでは気が付かなかった箇所がいくつかあった。このシーンはブローアップだったか、とか、ここは悩んだろうナとか、デビッド・リーンの視点をなぞるように見ることができた。もう一度みたい。そして、アリの登場シーン、ロレンスが砂漠の遠い彼方から生きて戻ってくる、一連の「蜃気楼」シーンは本当に圧巻。映画の力とはまさにあれなんだ!
  • エイミー・グッゲンハイム(1.17)  イメージフォーラムの誘いで来日中のNYのインディペンデント映像作家エイミー・グッゲンハイム氏の講演/懇親会に参加。久しぶりに映像作家/ダンサーの万城目さんに遭遇。『吸血』の話も少々。グッゲンハイム氏の未来の長編作品が今から楽しみ。終了後、『吸血』運営委員リーダーの中山氏と渋谷で軽くギネスを一杯。
  • 『アレキサンダー大王』(1.18)  北千住でアンゲロプロスの『アレキサンダー大王』がやるというのでこれは絶対に行かねばと勇んで行くはずが、どうも天候の具合のせいか、眠い。最初から眠い。で、思ったとおり3回睡魔襲来。しかし4時間近い映画のほんの数分であること間違いなし(笑)。作品は普段の詩的幻想自然主義的映像(!)というよりも、ギリシャの政治情勢の比喩、揶揄のようなブラックでユーモアのあるものだった。予想していたものとまったく違ってたけど(史劇スペクタクルと思っていた)、アレキサンダー大王を象徴として突っ込んでいく発想はそのまま日本の天皇制に転換できるのかもしれない。 会場だった芸術センターは初めて黒テントの劇中映像をやった『絶対飛行機』のテント会場のその後の姿であった(!)。 会場にいた企画運営主任の女性が偶然、中山の映画美学校の同期生でびっくり、しかも『絶対~』とほぼ同時期にオレも中山の家で開いた上映会でその人に会ったことがあるということも判明。 やはり狭い業界。悪いことできないネ・・(笑)