2012年2月22日水曜日

ボンド戦争戯曲集第一部二部


2月16日(木)エドワードボンド戦争戯曲集第一部と二部を観劇。
去年5月に座高円寺劇場創造アカデミー1期生がやった公演の再演で今回は座高円寺劇場創造アカデミー2期生のもの。印象としては前回よりも美術が凝った(予算が増えた?)感じで一部がより、色とりどりになっていた。演出家の生田氏の舞台は前回と今回しか見たことがない。一部と二部とではどうしても役者の力量の差みたいなものを感じてしまったが、それは今後、彼ら各々の活動表現の課題となるだろうと思う。客席側からは皆芝居に真面目に取り組んでいる姿がとても一途に見えた。またそういう志を持った人間が集まった場だからこそ、この戯曲も試みられるのだ、と思った。ボンドのスケールは云ってみれば、現代の「イリアス」といっても過言じゃないのかもしれない。戦争という題材を全人類規模の社会構造として一括りにして一から描いている。その彼の真摯な姿勢と問題意識は商業を目的とした芝居には本質的に合わない。故に大手メディアに汚染されたこの島国の思考回路に如何にこの戯曲が訴え得るのか? いかなる状況でも発信することがまず第一であるとして、最近脳裏に良く浮かぶのは、東京という場において、オレたちはコントラストの一点を一点を搾り落としているんだ、というイメージ。滴のようなハイコントラストの対比色を、劇場という場においてなんとか搾り落としている、そんなようなことを良く考える。。。
演出に関して思ったのは一部はハイコントラスト、二部は始まりから終りまでグレートーンのようだった。生田氏のその多彩な表現力には感銘したし、(佐藤)信さんの缶詰に立って演説するあのスタイルも、やがて時代がすぎて缶詰が小さな希望の緑に変わるあの描写は、作品全体の願いなんだろうと思った。どんよりした灰色から光を携えた緑が生まれる、あれは人類の真摯な願い。演説のような胡散臭いプロパガンダを人類は越えて一人ひとりが願い、育まなければならない、そんな純真なメッセージをボンドは抱いているのかもしれない・・・!
いずれにせよ、この戯曲は全部で3部あるということで、必ず第三部も上演してもらわなければならない。贅沢を言えば、次回は生田版、佐藤版の第三部を見てみたいと思った。演出家同士の"バトル"なら、観客はなんの被害もないだろうからさ(笑)。