2020年5月16日土曜日

陸軍中野学校 密命

シリーズ四作目「陸軍中野学校 密命」 冒頭、舞台は前作の上海の町から一気に本土日本へと飛ぶ。前作の諜報娯楽巨編から、一作目以降、影薄くなっていた雷蔵扮する諜報員椎名と女性との関係、めぐり合う人物との心理戦、さらに技巧的には無駄な切り替えしを控えたワイドショットの多用など、緊張感あるシーンで構成された佳作。雑さが目立った二作目から一作ごとに秀逸な出来になっていく気がする。一作目がシリーズ中最高とすれば、本作は二番手といえよう。
時は開戦前年の昭和15年、中国への和平交渉をなんとか働きかける本土外交側とそれへの阻止を暗躍する見えない敵の攻防。同じ時期に米国との交渉などもあったころだが、況やこの作品の果たすべきとする制作側の心情は思うに、大東亜で占領国だった日本のアジア諸国への心痛な反省だろうか。大映映画路線がほかの映画会社に比べ重く捉える傾向にあることも加味されるだろう。いずれにせよ、今回は敵側の日本人への恨み節のような情念は見られず、情念のそれは、孤独な諜報員椎名の運命そのものにフォーカスされていた。孤独な諜報員椎名と、主要国への和平交渉が全滅し、開戦へと進まざるを得なかった敗北国日本の運命とが、次にどう果たされていくのだろうか!?
明日はシリーズ最終章「陸軍中野学校 開戦前夜」 もうこれが最後かと思うとツラいな~もっと見たい。